衆議院選への道(1)

   - 消費税5%の旗印 -

2019/11/12

7月の参議院選挙では、与党の自公が過半数を制するも、いわゆる改憲勢力が2/3の議席を失うなど、安倍政権の勢力拡大とはなりませんでした。一方の野党も、一人区での選挙協力で一定の成果をあげたものの、一強多弱といわれる安倍政権を揺るがすことはできませんでした。
とはいえ、残り任期が2年を切った安倍政権は、山積する課題、政策の行き詰まりや頻発する不正疑惑により衰えを隠せない状況に陥りつつあり、衆議院の解散も取りざたされる昨今です。
そのなかで、野党は次期衆議院選挙での安倍政権打倒を訴え、野党共闘の重要さを認識するものの、政権奪取に至る道筋や政権奪取後の政権構想について各党、各会派の思惑は異なり、大同団結に至る道筋はまだ遠いと言わざるを得ません。

参議院選挙後の動きとして、野党第一党の立憲民主党枝野幸男代表は、国民民主党玉木雄一郎代表と衆参両院で統一会派を結成することで合意し(8/20)、会派「社会保障を立て直す国民会議」(以降:社保)、社民党も参加して、野党共闘の母体として共同会派が構成され、野党共闘の第一歩となりました。
しかし、政策面では各党・会派の立場を尊重するという玉虫色の合意で、衆議院選で打ち出す政策については定まっていません。

参議院選挙後、政策面で野党共闘に言及したのはれいわ新選組山本太郎代表です。
消費税廃止という自党の政策から譲歩し、衆議院選に向けての旗印として「消費税を5%に減税」を掲げ、各党に共闘を呼びかけました。
これに最初に公式に反応したのは共産党でした。共産党は、これに先立って立憲民主党、国民民主党、社保、社民党、れいわ新選組に対して政権構想協議・党首会談を呼び掛けていましたが、公式にこれに応じたのはれいわ新選組のみでした。
こうして、共産党志位和夫委員長は山本代表と会談(9/12)し、消費税の廃止を目標として共闘することで合意し、共産党は党の政策として「消費税を5%に減税」による野党共闘の呼びかけ(10/1)を行います。

れいわ新選組の呼びかけに次に応じたのは、馬淵澄夫衆議院議員でした。
馬淵議員は、前回衆議院選の希望の党騒動のあおりを受けて落選した民進党系の元職議員のグループ「一丸の会」の会長です。 馬淵議員は繰上当選し共同会派に属していますが、もともと消費税については否定的で、れいわ山本代表と共同で「消費税減税研究会」を立ち上げ、初会合(10/30)には22名の現職議員が参加しました。この中には、消費税減税には消極的な立憲民主党に所属する議員も参加しており、消費税減税を旗印とした野党共闘に期待がかかりました。

この日(10/30)、立憲民主党の枝野代表は国民民主党の小沢一郎衆議院議員と年内の新党結成について会談しています(時事通信)。一部報道(日テレNEWS24)では、枝野代表は新党について、立憲民主党への合流が原則との立場を崩さなかった、と報じられています。

国民民主党玉木代表も、れいわ新選組山本代表とのYouTube対談(10/31)で消費税減税に理解を示し、その他にも若い世代の所得税減税など家計負担を減らす施策について言及しています。
ただ、この対談については、玉木代表は山本代表に対し、消費税減税のみにこだわらずその他の方法での家計支援を掲げて野党共闘に加われないか、を打診したように感じられます。玉木代表にとっては、消費税減税に消極的な立憲や社保と、過激に消費税5%を主張するれいわ新選組や一丸の会との間を取り持ちたいとの思惑があったのではないでしょうか。

ところが、馬淵議員が交通事故で重傷を負うという事態が発生し(11/4)、消費税減税の旗印が危うくなってきます。

共同会派に属する3党1会派と共産党の党首クラスが会談し(11/6)、次期衆議院選挙での候補者調整について合意します。しかし、この席では消費税減税やれいわ新選組に関する話題は出なかった、と出席した岡田克也衆議院議員が述べています(11/8 J-CASTニュース)。
同じくこの会合に出席した社保の野田代表は、北海道新聞のインタビュー(11/10朝刊)で、立憲の枝野代表を中心として国民などが新党へ合流することには前向きながら、「消費税5%への引き下げには賛同できない」と明確に語っています。
一方、国民の玉木代表は国会内の講演(11/11)で、自公連立政権を引き合いに出し、政策が異なっても連携できるとして立憲との早期合流には慎重姿勢をにじませます(日経)。

玉木代表は小沢衆議院議員とも会談しますが(11/12)、新党合流を主張する小沢議員との間でどういう話し合いがなされたのかは明らかではありません(産経)。

この流れを見ると、どうやら立憲+社保は消費税減税を旗印とすることは受け入れられず、国民の玉木代表は立憲や社保との共闘を候補者調整にとどめる方向に舵を切ったのではないでしょうか。「家計第一」を掲げる国民民主党が消費税減税を掲げないことは政策として整合性に欠けてしまいます。
共産党もいまさら消費税減税の旗を降ろすことは考えにくく、候補者調整にはある程度応じるものの、れいわや国民との連携を重視するものと思われます。
立憲+社保陣営は、安倍政権打倒を旗印にして国民や共産の取り込みを図るのでしょうが、消費税減税を旗印としないことについて、どのような理由をつけて所属議員や有権者を納得させるのかが問われます。

「消費税を5%に減税」での野党共闘が成立しないとなると、山本代表が公言するように、立憲+社保 vs れいわ の仁義なき戦いが衆院選で繰り広げられる公算が高くなります。
馬淵議員が療養中となってしまった「消費税減税研究会」ですが、幸いなことに「政策連合:オールジャパン平和と共生」が「いま消費税を問う!」として院内集会(11/15)を予定し、同研究会のメンバの出席が見込まれています。

政策連合は、同じ政策公約の旗の下に超党派で結集することを呼びかけていますが、立憲や社保陣営が消費税減税反対に固執するなら、立憲内の消費税減税派の離脱をきっかけとした野党の再編成が起こる可能性も出てきます。消費税減税と野党共闘、まだまだ目が離せません。